幼い私にさようなら
あの頃はあいつの弛んだ顔を見るだけで虫唾が走ってしょうがなかった
もういい年なんだからしゃっきっとしろと何度言ったことか
でもそのたびあいつはへラッと笑って誤魔化す
それがまた苛立たせる
そんな仲だった
しかし今ではラビのことを見るだけで胸が鳴るし
逢えないとなんだかとてもつまらないと感じてしまう
こんな変化が起きたのか自分でも分からないが不可抗力で起きてしまう
「!!」
突然名前を呼ばれびっくりし体が上に跳ねた
後ろを振り向くとそこにはラビがいた
ほんの少し顔が赤くなる
「ラビかぁ。どうしたの?」
「いや、今任務から帰って来たんさ」
「そ、そっか」
呂律が回りにくい
ラビと面と向かって話せない
今ラビと目を見て話したら、きっと泣きたくなるほど赤くなると思う
「それで何か用?」
「ああ。に言いたいことがあるんだ」
こうやって“私に“と個別されると、なんだか特別の様な気がして嬉しくなった
「なに?」
「オレ、科学班の女の子と付き合うことにしたんだ」
頭に大きな石が落ちてきたみたいな衝撃が走った
なぜかそう思うか分からないけど
今の私が一番聞いてはいけない言葉という気がした
視点が合わない
「?」
ラビの言葉で目が覚めた
私とラビはただの友達なんだ!祝福してあげないと!!
「よ、よかったね!ついにラビにも恋人ができたっ!!」
目尻に熱いものが溜まっていく
涙が溜まっていく
ダメだ!泣くな!
なんで私がこんな泣かないといけないんだ!
堪えきれなくなった瞳から涙が今にも零れそうだ
助けて
今泣いたら、すごく惨めになる
「おい。ちょっとこいつ貰ってくぞ」
突然、目の前を黒いものが覆った
それは確かにここの団服
そしてこの独特の低い声は。
「えっ神田?!」
「悪いな。に用があるんだ」
「そっか。ごめんさユウ」
そう言ってラビと別れた
神田は私の顔に腕を当てたまま、引きずり進んでいく
神田に連れてこられたのは、人気のない教団内の倉庫だった
そこに着いてやっと神田は腕を解いた
「ちょっと!何すんのよ!!」
「うるせー!!あんな泣きそうなお前見たら・・・もういい!」
「はぁ?!訳分かんない!」
「お前ラビが好きなんだろ?!だからあそこで泣きたくないんだろ?
だから連れてきたんだよ!!」
神田は真っ赤になりながら言った
私はラビを好きなの?
そう分かった途端、目から涙が零れた
止めようと思っても止まらない
人前で泣くなんてかっこわるいと思っていた。
それを神田に見せてしまうなんてとんだ失態だ
「なんで気づかなかったんだろうね、私」
「もうだまれ」
神田は頭を一回軽く叩きそのまま黙って傍にいてくれた
私はなぜか妙に安心して泣き続けた
(ついでにオレの気持ちにも気付けよ)
貴方を見るとやけに胸は弾んで
逢えないと悲しくなって
そう言うのは全部貴方が好きだったからなんだね
こういう気持ちを恋っていうんだ
でも気づくのが遅すぎた
貴方はもう他の人のもの
どんなに泣いたって無駄なんだ
幼い自分はバカみたいに無知なんだろう
こういう気持ちって何て言うんだっけ
(幼い自分はなんて無知なんだろう。こうして人は大人になるんだ)
Dear Empty Handed!!
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