ただ見つめるだけ







あいつの飲んだカップはいつも置きっぱなし
片づけるのはいつも私だ


「んじゃ、行ってくるさー!!!」
「ちょっ待て!!ここ3階!!」


私が心配にも関わらず、ラビは3階から飛び降りた
ひやひやしてみてたけど、無事着陸したらしい
どんな足持ってるんでしょうね。ほんと

そのままラビを見ていると、ラビは科学班の女の子に話しかけた
はーそうゆうことですか
その子に会うために、足の故障も考えず飛び降りた
私の心配も気にせずに
そう思うと無性に腹が立ったけど
なぜだかラビを見ずにはいられなかった

私はちょっと前まで此処談話室でお茶をしていた
そんな柄じゃないけれど、たまに気取ってみるのも楽しいのだ
ラビは砂糖多めのアップルティー
あいつはこれしか飲まない
飲むときは必ず口を小さくする
そして最後に「おいしかったさ!!」と飲み終わる
飲み終わったカップを置いたままで

これがお決まりのパターン
カップに紅茶を注いで、そのカップを片づけて

ラビの中での私も実際その程度の存在なんだろうか
私はこんなに好きなのに
甘い甘い紅茶を飲んで、飲み終わったらさらりと置いていく

自虐的になるのは私の悪い癖だけど
あんなに笑顔になって
先ほどの科学班の子と話しているのを見ると
どうしてもそう思ってしまうのだ

可愛いフランス人形の様な子
私はどう転んでもあんな風にはなれないだろう


。ため息なんてついてどうかしたんですか?」


アレンだ
しまったな。嫌なところ見られてしまった


「いやー相変わらずラビ君モテモテだなーって」
「でも今話してる子は本命らしいですよ」
「まぁふられないように、姉さんは願ってますよ」
「ははは」


屈託ない会話をしていると、アレンが何かに気づいた


「あれ、そのカップ飲み終わってますよ?」
「それはラビが飲んだのだよ」
「じゃあ片づけときますね」

「やめてっ!!」


アレンの体は驚いたように揺れた
アレンがカップにふれた瞬間、私は大声を上げてしまった


?」
「あ、いやごめん。私が片づけるからいいよ」
「そうですか」


アレンはそのまま椅子に座り、本を読み始めた

私はさっき大声を上げた自分が心底恥ずかしくなった
でもあのカップは、私が片づけないといけないんだ

少しでもラビに何かしたくて、関わっていたくて
些細なことでも他人に取られたくなかった

カップが何回からになろうと
その度私が注ぎ直すから

恋人なんて求めていない
でもお願いだからそばにいさせて
その笑顔で私を明るくして

目を伏せ、ゆっくり開けると
なぜか涙が一つ頬を伝った


貴方の笑顔に







(要ちゃんにプレゼント!!)